ピアノ欲がムクムクしてきやした
はじめて恩田陸さんの作品を読んでますが、ほんとに読むのが止まらない。
この小説は、ピアノ国際コンクールの話です。
私は小さいころからピアノをやっていました。
コンクールにも何度か出させてもらっています。
(県のコンクールなので、レベルは全然違いますが。笑)
コンクールには出ていたけれど、音大を目指していたけれど、わたしはその頃ピアノがすさまじく嫌いでした。
1人で練習しなければならないこと、自分ととことんむきわなければならないこと、友だちとの遊ぶ時間が少ないことが、本当に嫌で嫌で嫌で、しょうがなかったんです。
もっと遊びたかった。
もっと部活をやりたかった。
もっと、もっと。
普通の中学生活を送りたかった。
だからピアノが好きではありませんでした。
とにかく、「やることになってしまっている」から、ただやっていた。
もちろん、気持ちは入りません。
心から楽しめません。
ただ、練習すればするほど、指だけが早く動くようになって、技術だけがついていく。
それだけで、みんなが「すごいね」って言ってくれる
ただ、それだけで満足してました。
けれど、音楽の本質はそうじゃない。
どんな楽器でもそうだと思うのですが、美しく思う気持ちや楽しむ気持ち、それと技巧があわさってはじめて素敵な音楽を奏でることはできる。
だから、わたしのように気持ちがなく、ただ鍵盤をたたいてるということは、
女優がセリフはちゃんと言えているけど、まったく感情がこもってないのとまったく一緒。
そんなの見てる側にはグッとこない。
視聴率は上がらない。
だから、わたしはいつも先生に、恵さんのピアノはスポーツみたいな音楽ね(要は指は早く動くし、的確だけど、無機質)と言われていました。
そりゃそうです。あたりまえです。
弾いている本人が心から美しいと思ってないのだから。楽しいとおもってないのだから。
そりゃ、聞いている側に何も伝わりません。
でも、今だったらちょっとちがうのでは、とこの本を読んで思ってしまったのです。
今だったら、きっとモーツァルトだってベートーベンだって、ショパンだって愛でることができるのではないか、もっと綺麗な音楽を奏でることができるのでは、と。
完全にこの本を読んで、勝手な錯覚を起こしてしまいました。
とんだ勘違い野郎です。
もう何年も、弾いていないくせに何言っちゃってるんだ、と自分でも呆れてしまいます。
けれど、それが本心なのです。
少し考えてみたら、この気持ちって、ピアノの発表会で1つ上のトモヨちゃんの演奏を聴いた時と同じなんです。
私もあんな風に弾けるようになりたい、次の発表会では私の方がうまく弾けるはずだもん、って思ったあの気持ちと。
とすると、わたしはこの登場人物たちに嫉妬しているかもしれない。
なんだよ、気持ちよさそうに弾きやがって、と嫉妬しているようなのです。
本の中の人に嫉妬しているなんて、わたしは本当にどうかしちゃってるのかもしれません。
けれども、恩田陸は、わたしをそうゆう気持ちにさせてきます。
あのころの、コンクールのステージでの緊張をもう一回味わいたい、と思わせてきます。
はぁ、もう、これはやばいです。
実家に帰ったら、きっとすぐにピアノの前に座っていることでしょう。
この、コンクールの行方が気になりすぎて、早く先に物語を進めたくて、ランチも1人で食べたい衝動に駆られています。
あぁ、明日はひとりでこっそり抜け出そうかしら、とニヤニヤしながら、これからまた物語の世界に戻ります。
それでは、いってきます。
紹介した本