ぱんこの日記

ていねいなくらしのために、ゆらゆら書きます。

先に言われるのと、言われないのでは、大きな違いがあるんです

「はい、ちょっと冷たいですよー」

冷たいくらいなら、大丈夫。

いいですいいです、とっととやってください。

これは、ついこないだ子宮頸がんの精密検査「コルポ診」と「組織診」をやったときのこと。

 

いやー、自分がまさか、健康診断で引っかかるなんて思ってもみなかった。

しかも、「まぁきっと大丈夫だろうけど念のため受けとこう」くらいの軽い気持ちで、言ってしまえば安心料を支払うくらいの気持ちで受けた「子宮頸がん」の検査だった。

それが12月の終わり。

それから1ヶ月くらい経って、結果は、仕事かえりに家の郵便受けで受け取って、そのままリビングに入って、手を洗ってせんべいか何かを頬張りながら確認したと思う。

それは郵便ポストに雑多に入っているチラシを流し目でみるのと同じくらいの確認の仕方で、まったく警戒してなかった。

けれど、そこにあったのは「要精密検査」の字。

あまりにも思いがけなくって、おもわず「えっ……」と絶句してしまった。

だって、何もない。

痛くないし、血がでてきたわけでもないし、気分も悪くない。

なんなら生理も、予定日とズレることなくしっかりきている。

全然そんな前ぶりがない。

でも、そこにその文字があるのは紛れのない事実であって、まるで自分ごとではないような気持ちがして、それからいきなり全身から力が抜けて、がっくりした。

まだ癌だってきまったわけではないのに、気持ちはすっかり落ち込んでしまって、何度も何度もその文字を読み返した。

あぁ、こんなにもダメージを受けるものなのか。

はぁ、我ながら情けない。

でも、まだわからないのだから、と自分で自分を励まして、すぐにネットで検査の予約をした。

婦人科にいくのは、久しぶりだ。

初めて行くクリニックだったけれど、ネットの情報と少しも違わず、とても綺麗で、おしゃれで、そして多くの女性で賑わっていた。

受付の女の人も、看護師さんも、お医者さんもとても上品で、優しくて、緊張を温かいなにかでほぐしてくれた。

それでも、やっぱり婦人科特有の診察台で足を広げてお見せすることには、どうしても抵抗があった。

もう、このひとたちと顔を合わすことはない、と思い込んで、けれどその1分後には目を見合わせて話をしなければならないのには、フフっと笑ってしまうような小っ恥ずかしい気持ちになった。

そしてこの検査で、まだ子宮頸がんではなく、その前段階の異形細胞がある、ということがわかった。

この異形細胞は、ほとんどが自然治癒で消えるらしいのだけれど、念のため総合病院でより詳しい検査をするように、と言い渡された。

詳しい検査をする理由はなんだかよくわからないけど、でも、ここは受けておこうとすぐに大学病院に行った。

そこでうけたのが、「コルポ診」と「組織診」。

その大学病院では、やけに淡々としたお医者さんで、検査についてあまり十分な説明がないまま、診察台Bに乗ってください、と言われた。

言われるがままに、診察台Bのカーテンの中に入り、タイツを脱ぎ、下着を脱ぎ、診察台に乗った。

「はい、ちょっと冷たいですよー」

男のお医者さんがそう言う。

2度目ともなると、診察台で足を開くことに抵抗がなくなったのだろうか、相手が淡々としているからだろうか、はいはいそんなことどうでもいいですよー早くやっちゃってください、と半ばなげやりな気分になる。

けれどその後、チクチクしたり、チョキンという音が聞こえたりして、気が気でない。

思わずイタっと声がでてしまう。

え、聞いてないんですけど。

冷たい、しか。

少し痛いですよー、とか、ちょっと我慢してくださいねー、とか言われてないんですけど!

普通いうでしょ。

歯医者さんでも、そんなに痛くないときだって「少し痛くなりますよーがんばってくださいねー」って励ましてくれるでしょ!

なのに、そんな歯医者と比べ物にならないくらい痛いのに、全然そんなの聞いてないんですけど!

内臓を切られる(正確には子宮細胞)っていうのは、その痛みのために、たとえ顔のパーツがすべて中心に寄ってしまったとしても耐えるしかできないような、そしてそれと同時に大切なものをえぐられたような、なにかに侵害されたような屈辱的な気持ちになる。

そんな私に、まるで街ですれ違った時に肩がぶつかったかくらいのレベルで「大丈夫ですかー」と全然心配してない声で、中身スカスカの言葉をかけられる。

こうゆうときって、大丈夫じゃないけど大丈夫って言うしか選択肢がない。

そんな心地がいいとは言えない状況から、そそくさと逃げようと思い、下着を履いて、タイツに片足をつっこんだ時だった。

急に気持ち悪くなったのだ。

気持ち悪くて、コホコホと弱々しい咳がでる。

あれ、おかしいな、と思ったときには立ち上がれなくなってしまった。

あれ、これはなんだ。

手が痺れて、足が痺れていく。

「すみません、気持ちが悪いので、少しここで休んでいいですか」

慌ててお医者さんと看護師さんが3人かけつけて、いつのまにか車椅子にのせられて、ベッドに横にならせてもらった。

私は、今まで一度も貧血になったことはないし、倒れたこともない。

あぁ、これか。

これが貧血なのか。

いまだ子宮も痛い。

体のどの部分も、ほんのちょっとも力が入らなくて、痛くて、歩けなくて、なんだか自分がとてつもなく非力で、脆く感じる。

ちょっとでも押されたら、もう二度と起き上がれなくなるのではないか、と思うくらい力がない。

人間って、脆いんだなー。

片足タイツ、片足生足の私は、しばらく横になりながらぼんやりそんなふうに思っていたら、「すこし落ち着いたかなー?」と言いながら看護師さんがやってきた。

この検査でね、緊張してて、痛かったことでさらに緊張して、それで終わった途端に力が抜けてこうなっちゃう人って多いんですよー。

だから心配しないで大丈夫ですよー。

 って言ったのです。

それも聞いてないよ、痛いってことも、倒れることもあるってことも、聞いてない!

なんでしょうね、この後出しじゃんけんされたときのような気持ちは。

なんでしょうね、この敗北感は。

やっぱりね、想像されるであろうことは、事前に言っていたほうがいい。

絶対、そのほうがいい。

だって、合意が取れるからね。

そうならなかったら、それはそれでラッキーって思えるからね。

よかった、って思えるからね。

だから、何ごとも、考えられること(メリットもデメリットも)先に伝えたほうが相手のためにはいい、と思うのです。

それがサービスだと思うのです。

それが病院であっても、そのスタンスは大事だと思うのです。

伝えることは大事。

ただ、伝え方はもっと大事。

そんなことを思った「コルポ診」「組織診」。

これから受けるひとは、少しだけチクっとするし、私みたいに気持ち悪くなってすこし安静にする必要がでることもあるよってことを覚悟をしていたほうがいいかもしれません。